●新年を迎え、南米チリ在住の教え子からお便りが届いた。もう彼は、40歳半ばになったと思う。私が3年生のみの担任を務めた学年団の生徒である。

●今から20数年前の彼らの卒業式の日に、私は、クラスの生徒たちがしたためた「10年後の自分に宛てた手紙」を預かることになった。つまり、10年後にはみんなで集まり、「手紙」を私が手渡すということだ。その生徒たちとは、卒業後も複数回集まりを開いていた。20数人で、茶臼山に1泊キャンプに行ったこともあった。

●ところが、10年後、そのことを決めた張本人である私は、すっかり忘れていたのである。思い出したのは、11年後のことだった。その間、引っ越しがあり、段ボールに仕舞い込んでいたのだ。10年後に忘れたから、その翌年に会を開くというのもカッコ悪いから、いっそのこと、きりのいい20年後にその手紙を郵送することにした。

●20年後は、さすがに忘れなかった。糊付けされた彼らの手紙を郵送し、会を開こうということになった。再会の言葉は、「手紙が届くまで、私も忘れていた」、「確か、タイムカプセルに入れて、どこかに埋めたと思っていた」、「私は覚えていたよ。その内容も知っている。いつ会を開くのかと、ずーと考えていた」様々な反応があったことが面白い。私には各々の手紙の内容については一切わからないが、20年前の自分が書いた手紙を読んでみて、いろいろと考えることがあったに違いない。その生徒たちとは、今では、LINEで結ばれている。

●南米チリからのお便りとは、10数年間、日本の鉱山会社の現地法人の管理職として派遣されている、先の教え子の一人からのものだ。

●南米チリの首都サンティアゴ周辺では、様々な社会問題が蔓延し、ここ数年暴動(チリ暴動)が発生している。日本でも報道された。彼が住む近隣の都市コキンボでも、チリ暴動に伴い夜間外出禁止令が出されていたが、最近、やっと落ち着き始めたそうである。

●チリ政府は、SDGs(持続可能な開発のための目標)への取組に積極的だそうだ。2050年までには、再生可能エネルギーを70%以上にするらしい(Chileエネルギー2050)。確かに2005年以降、経済的には豊かになってきたが、新しいものと古いものが共存していて、地球規模の発想でSDGsの取組にベクトルを合わせるのは、なかなか難しいのではないか、ということだ。

●いつの時代でも、どこの国でも、新旧が混在するのは世界共通であるが、何を見出し、どのように未来を方向付けるかが、本当に問われる時代になったことは間違いない。なぜならば、私たちが暮らす大地、地球環境の変化が起こっているからだ。

●一色高校では今年、2030年に国際社会が到達すべきSDGsについて、地域社会を視野に入れて、学校として取り組む予定でいる。これは、「新年のご挨拶」でも簡単に説明した。こんなことを確認しながら、サンティアゴ近隣の都市コキンボの様子を今宵は楽しむことができた。矢嶋くん、ありがとう!

(村瀬)

動画「昔ながらのマーケットと近代的な食品街〜新しいものと古いもの」