1 みなさんに知ってほしい3つのこと

● 日本は今、これまでの日本の教育の強みを再検証しつつ、新しい時代の到来を想定し、教育の大改革を進めています。少子化・高齢化やグローバル化の進展、雇用形態や地域社会・家族の変容が進み、格差の再生産とその固定化、地球規模の課題への対応などが、日本の課題となっているからです。

● 特に、数十年後の学校教育の在り方は、今とはずいぶんと変わっているでしょう。次の3つのことが、今後の学校教育の在り方を考える上で大切な点です。

 日本の総人口は、2004年をピークに、今後100年間で100年前(明治時代後半)の水準

に戻っていくとされ(国土交通省)、この変化は千年単位でみても類を見ない極めて急激な減少です。

 2040年に子供の数が半減する自治体、子供が300人未満の自治体の分布も予測されています(NHK)ので、これまでとは違った学校・教育の在り方が各自治体で検討され始めています。

 科学技術の進展を想定し、日本と合衆国ではAI(人工知能)やロボット等による代替可能性が高い労働人口が50%弱であるとの報告(野村総合研究所)があります。これに対して英国は、35%にとどまっています。

●これは、人間の様々な営みが相互に関連し合って生み出された新たな時代の方向性ですから、今後何が必要か考えることが、これからの学校教育の重要な課題となることを確認しておきましょう。危機感は必要ですが、この事態を冷静に受けとめ、必要な手立てを講じることが大切です。これまでの人類の歴史を振り返れば、新たな時代状況に対して、その時々に必要な選択・判断をし対処してきたことがわかります。

●学校生活を振り返ってみましょう。授業や部活動、学校行事やボランティア、各種考査や模擬試験など、私たちは日々、学校という場で、試行錯誤しながら各自の目標達成や課題解決に向けて取り組んでいることに気付きます。

●私たち人間の強みは、目的を設定し、感性を働かせながら、みんなで話し合いながら協働して問題解決にあたることにあります。よって、新たな時代の方向性を捉え、人間の強みに自覚的になり、一色高校のこれまでの取組の特色を再確認しながら学校作りに努めることが、私たちの課題となります。

●今の小・中学生、高校生のみなさんは、日本の教育改革の真っ只中で、学校生活を送っています。2020年度からは、小学校では、プログラミング的思考を養う授業が必修になります。既に、一部の小学校では、「猫がネズミを追いかける」プログラミングの授業が始まっています。また、その年、これまでの大学入試センター試験が廃止され、択一試験問題(正答を記号で選ぶ)だけでなく、一部の科目で記述問題を取り入れた新しい大学入試が始まります。これらは、新たな時代の方向性を捉えた、日本の教育の大改革の一例です。

●ちなみに、欧米諸国・日本の授業の取組の一部を示しておきます。多かれ少なかれ、それらの国々と日本は、新たな時代の方向性を共有しているからです。

 <ドイツ>では、個人ごとの習熟度の違いにより、それぞれの達成目標を明確にした授業が行われていました。<フランス>では、生徒が意外に思う課題を設定し、対話的な授業が展開されていました。<イギリス>では、世界の津波と日本の東北の震災を比較して、人がどのように対応したか探究する教科横断的な取組が報告されていました。写真④右の真ん中の、日本の浮世絵の一部を使った東北の震災を思わせる「How did they react ??」(彼らはどう反応したのか?)という言葉が印象的です。<アメリカ>では、学習内容を別の観点から振り返る授業が実施されていました。写真⑤「When you believe you can, you can!」(できると信じれば、あなたはできる!)にあるとおり、心の持ち方を方向付ける標語があちらこちらに掲示されていました。<日本>では、協働で資料を読み解き、その結果を黒板にまとめ、グループごとの読み取りの違いを確認する授業が展開されていました。

 ちなみに、これらの私が調査した欧米諸国の授業では、日本の生徒がよく使っている「ある物」が机上にありませんでした。それは何でしょう・・?「消しゴム」です。フランスの生徒は「消しゴム使うと先生から叱られます。修正する場合には、自分の考えの道筋は後で見て分かるように、線を引いて消すことが決まりです。書くときには緊張します。」と教えてくれました。もうずいぶんと前からこうなっているそうです。