学校長<転出>のご挨拶〜季節の変わり目に思う

●私には、お気に入りの場所がある。それは小さいころ、魚釣りや魚とりをしていたある川のほとりである。多くの河岸の景観は、昔とずいぶん変わってきた。天候の激変により大量の雨水が上流から流されてきた時に川が氾濫しないように、積み石や鉄網で護岸が固められている。魚釣りや魚とりをしている子供の姿を今ではほとんど見かけることはない。

●私のお気に入りの場所とは、こんな時代の変化を感じさせないところだ。そこは、この季節になると、暖かな太陽の光を受けて、透き通るような色彩を帯びた菜の花が咲き始め、今でも、狐やカワセミが訪れる。人がいなくなったことが、このような変化を生み出しているのだろうか。

●朝早く、出勤途中にこの川岸に寄る。そこで考えることがある。それは、この季節の変わり目は、学校の変わり目であるということである。3月から4月にかけて、学校は大忙しだ。高校入試選抜、進級認定、1年の記録の整理、新入生の入学準備など高校固有の公務に加えて、一色高校では、本館校舎の長寿命化のためのドレスアップが進行中である。黒いシートに覆われた本館棟校舎は、どのような顔を見せてくれるのだろうか。シーソーのように前後にカタカタと傾くトイレの木製下駄も、これで見かけることはないだろう。

●今年創立70周年を迎える一色高校の幕開けは、一色高校らしく、和太鼓部「いっしき」の演奏により告げられる。令和3年4月11日(日)、西尾市文化会館において世界的な書家渡辺祐子さんによる「立体書道パフォーマンス」とコラボして和太鼓部が演奏する。一色高校にとっての70年の歴史は、吉良氏800年の歴史には及ばないが、その歴史の一部であることに違はいない。

●それとともに、全校生徒からの公募により選ばれた創立70周年記念ロゴが飾る新しい「学校(総合)案内」、「生活デザイン科(新)パンフレット」、そして本校の特色の一つである「情報ビジネスコース(新)パンフレット」、創立60周年以来の10年間を振り返る記念誌編集作業、記念式典当日の「一色高校版SDGs〜愛する地域に向けた私たちの提言」(探究学習成果発表会)のための学習が計画されている。

●これらは、一色高校の「過去」・「現在」を「未来」へつなげるための大切なアニヴァーサリーである。その試みを次の世代に託すことになった今、お気に入りの場所にたたずみ、勤務した3年間を振り返る。お世話になった職員・PTA・地域後援会・同窓会・地元中学校・地域町内会・関係機関の皆様への感謝の気持ちは尽きない。「3年間、本当にありがとうございました。そして、一色高等学校創立70周年、おめでとうございます。」

(第17代校長 <在任2018年4月〜2021年3月末> 村瀬正幸)