哲学対話(その2)〜画家ポール・ゴーギャンが描く物語

●前回の哲学対話(その1)では、詩人ロバート・フロストの「選ばれざる道」が描く情景から、イマジネーションの大切さについて、表現活動を通して学ます。

●哲学対話(その2)では、「タヒチの女」で有名な画家ポール・ゴーギャン(Paul Gauguin)の絵画を取り上げます。詩的な言葉の表現から情景をイメージさせる手法と、色・形・それらの配列からなる絵画(光景)から言葉を紡ぎ出す手法とは、対照的な関係にあります。ともに、イマジネーションを豊かにしてくれる素材です。

●取り上げる作品は、「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか」(1897-1898年。ボストン美術館、英題「Where Do We Come From? What Are We? Where Are We Going?」)です。かつてボストンの高校の授業調査に行った折に、この作品を見るためだけに、時間を工面したことがあります。この作品には人類的視野からの歴史時間が幻想的に描かれいて、時間の流れに身を任せ、自己を対象化する力があります。生徒には、作者や題名などの情報は伏せて、先入観なくこの作品と対峙してもらいます。

●生徒には3つの問いを発します。1つ目は「この作品には、何が描かれていますか?」、2つ目は「パッチワークのように各所に描かれた光景をつなげてください。あなたはそこにどんなストーリーを描きますか?」、そして最後に、「あなたならこの作品にどんな題名をつけますか?」です。

●最後に、この作品は、絵画でよく使われる遠近法を使わない構図であることに触れ、このことが何を意図したものかと問いかけ、さらにイマジネーションを刺激するのもいいでしょう。時間の経過(歴史時間)が題材になっていることに気付けば、さらに味わいが深くなります。

なお、この作品は、NHK「おうちで学ぼうFor School」で、「レーサーはゴーギャン」(「びじゅ チューン」の動画)として現代的に解釈され取り上げられています。様々な解釈が可能である作品には、人々を魅了する底力があるのでしょう。

●哲学対話(その3)では、人口統計資料を素材に、人類の未来について概念マップを使って洞察してみようと思う。詩・絵画・統計を素材にしたこの3回の「哲学対話」は、序論として位置付けています。

(村瀬)