読書の秋

●2学期に入り、2年生の現代文Bでは夏目漱石の「こころ」を読み始めました。「こころ」は、いったいいつから教科書に載るようになったのでしょう。調べてみると、どうやら高校教科書にはじめて「こころ」が載ったのは、昭和32年度のようです(国立国会図書館レファレンス協同データベースより)。それ以来、実に60年以上にわたって「こころ」は高校生に読み継がれてきたことになります。

●そんな名作「こころ」を読むにあたって、東京にある夏目漱石ゆかりの地を散歩してみました。

 

 

 

 

 

 

 

 

●この文学散歩は、坂のある道を歩きます。まずは腹ごしらえに日暮里へ。日暮里駅の近くにある「羽二重団子」は、漱石も食べたというお団子屋さんです。スーパーで見かけるみたらし団子より一粒が大きく平べったい形で、食感はもちもちしています。あんこと醤油とありますが、どちらも素朴な味です。ここのお団子は、漱石以外にも泉鏡花や司馬遼太郎などの作品にも登場します。名だたる文学者たちと同じものを食べていると思うと、うれしいような恐れ多いような、複雑な気分になります。

●お腹を満たしたら早稲田へ移動し、その名も「夏目坂」を南東へ。この坂は、漱石の生家である夏目家がこの坂の途中にあったことからこう呼ばれるようになったとか。

●しばらく歩いてたどり着いたのが「漱石山房記念館」。漱石が晩年を過ごした地に建つ記念館です。「三四郎」や「こころ」をはじめとする漱石の作品たちがここで生み出されました。

●記念館の中には復元された山房や、初版本など貴重な資料が展示されています。もちろん「こころ」の初版本も見ることができます。「こころ」の装丁は漱石みずからが考案したそうです。鮮やかな朱色に白抜きされた篆刻風の文字が並ぶデザインは、漱石全集の装丁をはじめ様々な所で採用されています。

●また、館内は漱石のデビュー作「吾輩は猫である」にちなみ、あちこちが猫モチーフで飾られ、ミュージアムショップには猫モチーフのグッズが並びます。さらに、館内のカフェ(その名も「CAFE SOSEKI」)では「吾輩は猫である」に登場する菓子店《空也》のもなかを味わうことができます。このカフェはコップのデザインも猫なのです。漱石ファンはもちろん、猫好きにとっても楽しい記念館です。

●さて、文学散歩はこれで終わりです。小説は文章と想像力で楽しむものですが、その舞台やゆかりの地を訪れてみることでより一層、作品や作者に親しみを覚えることができました。本を持って町に出てみるのも、また読書の楽しみ方のひとつかと思います。
●次は「こころ」で登場人物たちが散歩した道を辿ってみたい等と思いつつ、筆をおくことにします。ここまでお付き合いありがとうございました。

  (渥美)