思考力を試されるクイズ問題?

●ある会の余興でクイズが出された。Xに入る数字は何か、という問題である。

●初めに見たとき、「こんなの簡単じゃん」と思った。「左の数と右の数の差を取っているだけだろう。X=24 でしょ。あれ?ちょっと待て。最後がおかしいぞ?ということは違う規則か?」

●出題者はヒントも出してくれたが、それでもわからない。ついに時間切れとなってしまった。

●正解は「12」。二つの数に使われている4つの数字の和が、矢印の下の数になっているとのことだ。なるほど、そういわれてみればそうなっている。

●気づいてしまえば簡単だ。しかし、やはり悔しい。数学科教員としてはこのまま引き下がるわけにはいかない。そこで、このクイズの背景を数学的に探ってみようと、次のような問題を考えた。

●問題『2桁以下の二つの自然数A,Bについて,その差と,各桁の数字の和が等しくなるようなものの組み合わせをすべて求めよ。』

●答え『A,Bそれぞれの十の位の数字をa,c,一の位の数字をb,dとすると、
AとBの差と,4つの数字a,b,c,dの和が等しくなる条件は、
(10a+b)-(10c+d)=a+b+c+d
すなわち,  9a-2d=11c…①
である。
①の右辺より,「 9a-2d」は11の倍数となるから、これを手掛かりに、a,d,cの組み合わせを探す(bは0~9のどの数字でもよい)と、次のような組み合わせが得られる。
A=90~99 ,B=72
A=80~89 ,B=63
A=70~79 ,B=54
A=60~69 ,B=45
A=50~59 ,B=36
A=40~49 ,B=27
A=30~39 ,B=18
A=20~29 ,B= 9 』

●これをもとに改めてこのクイズを見てみると、1段目から3段目までは
A=99 ,B=72
A=45 ,B=27
A=30 ,B=18
を利用したものであることがわかる。しかし、4段目以降はこの条件に合わない数を使っているため、「差を取ればいい」と考えた人はひっかけられてしまうことになる。うまく作ったものだ。

●このクイズを解くことができた人はエライと思う。しかし、この数の性質に気づいてクイズを作った人はもっとエライ。ひょっとしたら、車のナンバープレートを見ながら思いついたのだろうか。

●さらに考えてみた。AIにこのクイズを作り出すことができるだろうか?

●おそらく、こういう性質を持つ二つの数を探し出すことは、AIにとっては簡単なことだろう。しかし、決められたルールや条件の中で物事を考えるAIに、果たしてこういうクイズ問題を思いつくことができるのだろうか?

●そう考えると、「問題に気づき、課題を設定する力」こそが人間とAIの違いではないだろうかと思い当たる。だからこそ、これからの社会を生きる私たちには、「知識を活用して問題を解く力」だけでなく、「問題に気付き課題を設定する力」を磨いていくことが求められていくのだろう。

●ところで、このクイズをわが女房殿に出してみた。しばらくあれこれ考えた彼女は、私の期待に反して正解を出してしまった。おかげで私の悔しさは倍増した。

(本多)