新しい手帳

●今年もまた文房具店には、来年の新しい手帳が並んでいる。恒例の行事である。大きいものから小さなものまで、デザインも、書き込める日程の組み方も、様々なものが並んでいる。これらを手に取って見るのはとても楽しい。この時、未来に対して何か期待めいたことを感じるのは、私だけではないだろう。

●私はここ数年、背広のポケットに入る小さめの手帳を愛用している。この手帳は、月ごとの予定の全体を見開きで見渡すことができ、残りのページは、各月一週間ごとの詳細を書き込めるという、いたって簡単な仕様のものである。

●この新しい手帳を手に入れると、寿命数か月の古い手帳を眺めながら、年度末までの行事や新年度の予定を書き写したり、次年度の見通しを自分なりに想定して、鉛筆で書き込んだりする作業を始める。これもまた実に楽しい。

●誰もが経験のあるこんな作業を毎年繰り返していると、ふと気付くことがある。それは、私の未来は、過ぎ去った日々の営みが方向付けているのではないかということである。「1つの足は過去、もう1つの足は今、少し先を目で見つめて歩む」という言葉を思い出す。

●未来は白紙である。確定していることは何一つないといってよいだろう。しかしながら、古い手帳を眺めていると、すぐに始まろうとしている未来へのヒントが滲み出てくるような気がするのである。人は、時間の変化の中に意味を見出す存在である。このことを実感する時期がまた今年も訪れた。

(村瀬)